以前に掲載したIIJ GIOに仮想マシンを移行する レプリケーション編で使用したVMware Cloud Director Availability(以降、VCDA)は、VMware vSphereの仮想マシンをIIJ GIOインフラストラクチャーP2 Gen.2(以降、Gen.2)フレキシブルサーバリソース(以降、FSR)に移行する機能を持ちます。
VCDAには移行機能のほかにも、仮想マシンをFSRに継続的にレプリケーションしておき、災害などの緊急時に仮想マシンをFSR上に復旧させられる機能があります。
この機能を利用することで、災害復旧(Disaster Recovery:DR)のための環境としてFSRを利用可能です。
そんなVCDAを使ったDRについてご紹介します。
タイトル | 概要 |
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#1: DRの契約 | DRオプション利用時に必要な契約について |
#2: DRの保護設定 | 保護設定の詳細について |
第1回である本記事では、DR構成を構築するために必要な契約・サービス品目をご紹介します。
FSRを使ったDR構成について、以前の記事ではGen.2の東日本リージョンをメインサイトとし、西日本リージョンをDRサイトとして利用する構成を紹介しました。そのほかにもお客様のオンプレミス環境をメインサイトとし、東日本リージョンをDRサイトとして利用する使い方があります。
DR用途でVCDAを利用する場合は、保存先となるブロックストレージプールとFSRのDRオプション「レプリケーション:DR」を契約いただく必要がありますが、どちらのリージョンを利用するかによって必要な契約が異なります。
DRオプション | レプリケーション:DR クロスリージョン | レプリケーション:DR |
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メインサイト | 東日本リージョン | お客様オンプレミス環境 |
DRサイト | 西日本リージョン | 東日本リージョン |
DRデータの保存先 | フレキシブルサーバリソースブロックストレージプール(西日本リージョン) | フレキシブルサーバリソースブロックストレージプール(東日本リージョン) |
移行時に利用する契約は「レプリケーション:移行」であり、DRで利用する「レプリケーション:DR(クロスリージョン)」とは違うものです。
「レプリケーション:移行」が無料品目なのに対して、「レプリケーション:DR(クロスリージョン)」は有料のためご注意ください。
レプリケーション:DRでは、DRを設定した仮想マシンの台数に比例して月額費用が発生します。
また、データの保存先のブロックストレージプール上でも、仮想マシン容量に応じた使用料が発生します。
移行とDRによるフェイルオーバーの違いについて簡単に説明します。
まず、移行とは完全な同期状態を作りながら移行させることを目的とした操作です。完全な同期状態を作るために元仮想マシンの更新がない状態で同期を行うことで、ほぼ完全な仮想マシンの状態をFSR側に移行できます。
完全同期が重要な要素であるため、移行元の環境(vSphere環境やVCDAアプライアンスなど)や設備が正常動作している必要があり、いずれかに異常があると移行操作が成功しません。
一方でDRによるフェイルオーバーは、可能な限り短時間で仮想マシンを復旧させることを目的とした操作です。定期的なレプリケーションによって、作成された復元可能地点の状態の仮想マシンをDRサイト側に作成できます。
復旧時間が重要な要素であるため、リストア前に完全同期を行いませんが、元の仮想マシンの状態によらずDRサイトに仮想マシンをリストアできることが強みです。
上記の目的・動作の違いがあるため、移行用の設定ではDRを行えません。
仮想マシンにDR用の設定を行う上での重要な要素として、RPO(Recovery Point Objective:復旧目標地点)という概念があります。
VCDAではこれを実現するための要素として、DR機能において次の設定が可能です。
同期の間隔と保持ポリシーを適切に設定することで、直近の状態にもより前の段階にも復元できる可能性が上がります。
次回は実際の設定内容について、移行とDRの差について説明していきます。