本記事は、VCDAを利用したDRの利用方法の第2回です。
タイトル | 概要 |
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#1: DRの契約 | DRオプション利用時に必要な契約について |
#2: DRの保護設定 | 保護設定の詳細について |
前回の記事で紹介した、「レプリケーション:DR」を使用して、仮想マシンを保護する方法をご紹介します。
目次
VMware Cloud Director Availability(以降、VCDA)の構成やデプロイ手順は、過去記事のIIJ GIOに仮想マシンを移行する レプリケーション編を参考にできます。
「#0 VCDAについて」から「#3 VCDAの初期設定」までの記事を参考に、お客様のオンプレミスVMware vSphere環境とIIJ GIO インフラストラクチャーP2 Gen.2 フレキシブルサーバリソース(以降、FSR)の間で、仮想マシンを移行できる状態までの環境構築を実施してください。併せて、レプリケーション:DR(東日本)の契約を有効にしておきます。
※ なお、レプリケーション:DR(クロスリージョン)、及びレプリケーション:DR(西日本)は、FSRの西日本環境の契約が必要です。レプリケーション:DR(西日本)については、本記事と同様の操作手順で実施可能です。レプリケーション:DR(クロスリージョン)についても概ね同様の手順になりますが、設定項目等が異なる部分がございます。本記事では割愛します。
VCDAによるレプリケーション環境の構築後、VCDAのダッシュボード画面に移動してから操作を開始します。
なお、すでに移行用にレプリケーションを設定している仮想マシンに対して、追加の保護設定は行えません。該当マシンの移行レプリケーション設定を一度削除してから、改めて保護設定を行ってください。
ターゲットリカバリポイント目標(RPO) | 棒グラフ上の任意の場所をクリックすることで、レプリケーションの周期を決定します。(最小1時間~最大24時間)RPOが短いほど、DR環境に仮想マシンが比較的新しい状態での復元が期待できますが、短い周期でレプリケーションが行われることにより、トラフィック量の増大などが発生します。 |
保持ポリシーを有効化 | 保持ポリシーを有効化することで、仮想マシンの同期状態(インスタンス)を追加で1つ保持しておけます。初期値はオフです。オンにすると、追加設定項目が展開されます。ユニット(時、日、週、月、年)と距離(期間)を組み合わせて、ポイント イン タイム インスタンスの保存期間を決定します。 インスタンスの値は1から変更できません。また、保持期間をRPOより短く設定できません。 |
静止を有効化 | レプリケーション実施時に、対象仮想マシンに対して静止(Windowsのボリュームシャドウコピーなど)を実行させます。初期値はオフです。対象仮想マシンの動作に影響が発生することを念頭において、有効化するかどうかをご検討ください。 |
レプリケーショントラフィックの圧縮 | 有効化すると、VCDAアプライアンスからサービスエンドポイント間の通信に圧縮を行い、通信量を削減します。VCDAアプライアンスのCPUを使用して圧縮を行うため、VCDAアプライアンスが高負荷になる場合があります。 |
同期開始の遅延 | 有効化すると、レプリケーションの開始日時を指定できます。 |
設定完了後は、対象の仮想マシンがパワーオンされていれば、初期レプリケーションが開始されます。必要に応じて過去のVCDAの記事で紹介したものと同じ操作で、リカバリ設定など実施してください。
初期レプリケーション完了後、「受信レプリケーション」画面で任意の仮想マシンを1台クリックすると表示される「インスタンス」タブにて、仮想マシンの同期状態(インスタンス)を確認できます。
ここでは、保護設定での設定項目であるRPOや、保持ポリシーの設定によって取得されているインスタンスの情報が確認できます。
保持ポリシーをオフにしていた場合はインスタンスが1つ、オンにしていた場合は最大2つ表示されます。
※ 2つ目のインスタンスのみ、任意で削除できます。なお、ここでの削除とは、インスタンスの削除、すなわち復元可能な時点としての記録を削除することを意味し、レプリケーションの削除とは異なります。
インスタンス時間 | インスタンスを取得した時間が表示されます。また、ここで表示された時間の時点の仮想マシンが復元されることになります。次のレプリケーション実施時刻は、インスタンス時間からRPO設定で定義した時間の経過前にレプリケーションが実施されます。 例:RPOが24時間であれば、インスタンス時間の時刻から概ね24時間経過するころに次のレプリケーションが実施されます。なお、同期を手動で実施した場合は、RPOの経過時間も手動同期実施時点にリセットされます。 |
保持期間 | 保持ポリシーを無効化していた場合は、「最新のインスタンスのみ」と表示されます。 保持ポリシーを有効化していた場合、保持ポリシー設定のユニット・距離で設定した期間が表示されます。 保持期間は2つ目のインスタンスにのみ適用されます。該当インスタンスのインスタンス時間から、保持期間を経過するまで該当インスタンスが保持されます。 保持期間を経過後、次にレプリケーションが実施され、完了した際に、該当インスタンスが削除されます。同時に、更新された最新インスタンスの1つ前のインスタンスが、2つ目のインスタンスに移動します。 ※ 2つ目のインスタンスが存在しない場合は、インスタンスの移動のみ実施されます。この移動が発生するのは、次に実施されたレプリケーションの完了時です。 |
フェイルオーバーは、レプリケーション済みのインスタンスを使用して仮想マシンをFSR上に復元します。
レプリケーション完了後は、いつでもフェイルオーバー(またはテスト)を実施できます。
復元が正しく行われるかの確認のため、定期的にテストを実施し、仮想マシンが起動できることをご確認ください。
※ テストの実施についてはIIJ GIOに仮想マシンを移行する レプリケーション編#5: レプリケーションのテストをご参照ください。
フェイルオーバーは、レプリケーション設定1つにつき1回のみ実施可能です。実行後のロールバックはできません。
以上の操作を完了すると、フェイルオーバーが開始されます。
受信レプリケーション画面で、移行を実施した仮想マシンの「リカバリ状態」の表示が「フェイルオーバー済み」と表示されるまで待ちます。
画面上部の「データセンター」タブなどをクリックし、移行した仮想マシンが作成されていることを確認します。
フェイルオーバー完了後の仮想マシンの状態は、移行操作の場合と同様の状態です。
IIJ GIOに仮想マシンを移行する レプリケーション編#6: 仮想マシンを移行するの、5.移行完了後の操作以降の内容を参考に、事後作業を実施してください。
なお、移行操作の場合と異なり、移行元となる仮想マシンに対してのシャットダウン動作等は行われません。レプリケーション元の仮想マシンにアクセス可能な状態でフェイルオーバーを実施する場合はご注意ください(ホスト名やIPアドレスの競合など)。
また、移行で復元した仮想マシンとは異なり、ある程度過去の時点の仮想マシンが復元されることになるため、仮想マシン内のデータが古い状態になっている点にご注意ください。例えばデータベースアプリケーションであれば、インスタンスの復元時点でコミットされていないデータについては実質消失している状態になっています。そこから、データを最新状態に復元するのはVCDAのみでは不可能であるため、別途で復元方法を確保しておく必要があります。
これまで紹介してきたVCDAの機能について、すべてFSRへ仮想マシンを移動するパターンについてのみ紹介してきましたが、FSRへの移行やフェイルオーバーした仮想マシンに対して送信方向、すなわちFSRからVCDAアプライアンスが配置されているVMware vSphere環境へ仮想マシンを移行、またはフェイルオーバーの実施もできます。
この機能を使うには、あらかじめVCDAアプライアンスの設定で、仮想マシンの配置先となるデータストアの指定などを行っておき、VCDA管理画面から移行または保護の操作を開始することで、FSR上の仮想マシンに対してのレプリケーションを行えます。
※ 逆方向レプリケーションの実行には、VCDAアプライアンスが正常に動作し、レプリケーションが実施可能な状態である必要があります。
なお、移行・フェイルオーバー先がオンプレミス環境の場合、FSRで提供している仮想マシンテンプレートから生成されたWindows、Red Hat Enterprise Linux仮想マシンや、IIJサブスクリプションライセンスサービスにて提供されているライセンス製品を使用したものを稼働させることは、ライセンス違反となるためご注意ください。
以上で、VCDAによる仮想マシンのDRは完了となります。
VCDAによるDRは、あくまで仮想マシン自体のフェイルオーバーを目的とするものです。この後、お客様のシステムを復元するには、仮想マシン内のアプリケーションの復元操作や最新データへの更新、また、DR環境であるFSRへアクセスするように各種ネットワークの切替など、数多くのタスクが存在する点にご注意ください。